言い訳

そのとき、私は喫茶店で打ち合わせをしていた。


後輩が「あれ、揺れてますね」とか言い出しても、私は鈍感なほうなので気づかなかった。


そのうち激しく揺れだした。窓ガラスがピキピキ音を立てた。

ウエートレスさんは泣き叫んだ。


「外に出た方がいいんですかね」と聞かれたので、

「いや、出ない方がいいよ、ガラスが落ちてくるから」と、こいつはロボットなのかと疑われるほどに普通の口調で答えた。


公園に避難し、落ち着いてから会社に戻っても、当然仕事どころではない。


ネットを観たりして過ごし、翌朝に帰宅。


状況が見えてきたのは、月曜になってから。


私の住んでいる横浜は、さほど被害を受けていない。


それでも、災害の規模や原発の事故が明らかになるにつれ、Facebookやメールであちこちからお見舞いの言葉をいただいた。


普段は年賀状ぐらいしかやり取りしない、岩手や宮城や茨城の友人、親戚に連絡を試みるも、電話がつながらず。


日本が、国レベルで混沌とした状況になるのは私にとって初めての経験だ。


そりゃあ人間だから、だれでも自我が最初にくるんだけど、日本の社会ってことでみてみると、全員が「自分さえ良ければそれでよし」という考え方をすることによって成り立っている国家とは違うと思う。


そういう考えをする者に対しては、全身全霊を傾けていやがらせをする力が働くとさえ言えましょう。


こういうときは、踏みとどまって状況を見たい。

追い詰められた状況では、人間の器が試されると思っているから、周りの人を観察していたい。


でも、4月の頭に旅行の予定が入っている。
行き先は、ミャンマー、タイ、ラオスの「ゴールデントライアングル」。
もう、休みを取ってしまったし、チケットも支払い済み。


行きの飛行機はエアバスA380だし、帰りは羽田着。



被災された人に申し訳ない気持ちがするのだけど、義援金を送ることによって気持ちの整理をつけ、決行することにした。